下着の歴史は、そのまま人類の衣服の歴史でもあります。素材の進化、産業革命による大量生産、広告文化、そしてファッションとしての成熟??。時代の空気を映しながら、男性下着はかたちを変えてきました。
最初の下着は、腰に巻いた一枚の布だったとされます。股の下を通して固定する「ふんどし型」と、胴に巻いて留める「腰巻き型」の2系統。多くの古代文明では下着が唯一の衣服で、古代エジプトの王ツタンカーメンは145枚もの褌とともに埋葬されたと伝わります。
目の荒い織物から、柔らかい綿の平織りへ。腰と太ももを紐で固定する薄手のズボン「ブライズ(braies)」が着用され、豊かな者は足を覆う「チャスズ(chausses)」を重ねました。ルネサンス期にはチャスズがタイツ状に、ブライズは徐々に短く小さくなっていきます。
綿花の増産と自動織機・綿繰り機の発明で、安価な綿布が大量生産される時代へ。家庭の手仕事ではなく、工場で作られた下着を店で買えるようになりました。19世紀に一般的だったのは、手首から足首まで覆う「ユニオンスーツ(union suit)」です。
下着市場は飽和し、競争から様々な工夫と機能が生まれます。今日の大手ヘインズ社もこの競争を勝ち抜いた一社。紡績技術も進化し、1着のユニオンスーツを1時間未満で作れるようになりました。
競争の激化で広告の必要性が認識され、1911年に米週刊誌サタデー・イブニング・ポストで初の下着広告が登場。第一次世界大戦では、前でボタン留めする短パン型が兵士に支給されて流行し、ユニオンスーツは凋落へ。合成繊維レーヨンも下着に使われ始めます。
耐久性より「快適さ」を追求する時代へ。ボタンを減らし着やすさを高めた新デザインが特許として売り出され、収縮済み(下洗い済み)の下着も普及します。
男性下着の発明と改良が加速。1935年1月19日、シカゴのクーパー社が世界初のブリーフ「ジョッキー(Jockey)」を発売。腰まわりに紐やボタンの代わりにゴムが使われ、プロボクサーの短パンに似た「ボクサーショーツ」も広まりました。
それまで白一色が基本だった下着に、プリント柄や赤・黒が登場。ファッション性が理解され始め、レーヨンやナイロンなどの化学繊維も広く試されます。柄やメッセージ、キャラクターをプリントした製品も売り出されました。
1970〜80年代にファッションとしての下着市場が成熟し、広告は「性的魅力」を打ち出すように。90年代のストリートファッションでは下着を見せる着こなしが流行し、見せる前提の下着も広まりました。ブラジル発のソング(Tバック)も世界へ。そして90年代、ブリーフとボクサーショーツの長所を併せ持つ「ボクサーブリーフ」が登場--現在の主流へとつながっていきます。
